梅雨の前の初夏、そして梅雨が明けたあとの一面青空の夏、遠くを見るともくもくとした雲が浮かんでいることがありますね
このわたのような雲(=積雲)は夏の風物詩でもあります。
しかし、時にはその雲が空高くまで発達し(積乱雲となり)雷雨をもたらすこともあります。
夏は梅雨が明けて晴天が多くなる一方、気温の上昇により雷雨が発生しやすい季節です。急な雨で大変な目に遭った方も多いのではないでしょうか?
その雷雨の仕組みを理解し予測できるようになると急な雨や雷から身を守ることができるかもしれません。
ということで一応気象予報士である筆者が夏の雷雨について解説します。
※この記事は雷がなったら木の下に隠れるななど雷が鳴り出してからの身を守る方法ではなく、天気のことを知り事前に雷の危険性を予測し行動するのを目的としています。
※夏以外でも条件によればゲリラ雷雨が発生することもあります。一年を通して役に立つ知識です。
雲(主に積雲、積乱雲)の発達メカニズム
夏の積雲
晴れた夏の暑い日はだいたい地表付近の空気は暖まって軽くなるため上昇します。その上昇気流によって綿のような雲(=積雲)がよく発生するわけですが、普段はある程度空気が上昇するとまわりの空気と気温が同じもしくは低くなりそれ以上上昇ができなくなり、上昇気流はストップします。
日が落ちれば地表はだんだんと冷えてきますので少し雲が湧く程度で終わります。
しかし、様々な条件が重なるとこの「上昇気流」がいつまでも起こり、雲が空高くまで発達するようになります。
積雲、積乱雲が発達しやすいときとは?
空高くまで発達するということはそれだけ多くの雲粒(雨粒)を含むため強い雨をもたらしたり、上空に行けば行くほど気温が下がり氷晶(氷の粒)ができるため、次の項目の雷に繋がったり降雹が発生したりします。
夏に雲が発達する条件は以下のようなものがあります。
- 上空に寒気が流れ込む時・・・地上との気温差が大きく、上昇した空気がいつまでもまわりより気温が高い(=軽い)ことで大きな浮力を得て上昇を続けます。
- 山地・・・山地に空気がぶつかると上昇気流の手助けとなります。
- 下層に湿潤な空気が流れ込む時・・・台風が接近しているときなどによくあり、湿潤=雨の元となる水蒸気が多いので雲も発達しやすくなります。
- 太平洋高気圧が弱まるタイミング…上記の条件が揃いやすくなります。
天気予報で「大気の状態が不安定」とよく耳にすると思います。
地上と上空の気温差が大きかったり湿潤な空気が流れ込んでいる時に「大気の状態が不安定」になります。
図でイメージすると以下の通りです。
これらの条件を知っておくと雷雨を予測できるようになります。
そのまえに雷の発生のメカニズムを解説します。
雷発生のメカニズム
簡単に言うと氷の結晶がこすれ合って静電気が発生しその帯電した雲同士や地表に放電が起こる現象です。
詳しく説明すると、氷の雲の粒子(氷晶)は非常に軽いので上昇気流にのって上昇します。
その氷晶に過冷却水滴が付着し大きく成長し、いわゆる「あられ」や「雹」となると重力のほうが大きくなり落下をはじめます。
上昇する氷晶と下降するあられや雹は当然、衝突したり摩擦が生じたりします。
この氷晶とあられは電気の性質が違いますのでそれらが擦れ合うことで静電気が発生します。その静電気がたまり、雲と雲どうしや雲と地面に放電が起こることで強い光を放ったり音がします。
氷晶が多くなり始めるのは-20℃以下といわれています。つまり一定以下の気温になる高度まで雲が発達しないと雷は発生しにくいです。
豆知識
ある程度気温が低くないと雷が起こりづらいと解説しましたが、そのとおりで熱帯地域などは雷が起こりづらいです。台風本体もあまり雷が鳴らないですね。
逆に冬季の日本海側では、低い高度でも雷の発生条件を満たすので、実は冬季の日本海側のほうが夏の太平洋側より雷は多いのです。
雷雨を予測する①~前日まで
夏休みのレジャーなどは一度計画を立てるとなかなか予定を変更できませんね。
でもある程度前に天気予報がわかっていれば予定を変更することも可能かもしれません。
ここではただ天気予報を見ているだけでは気がつかない天気マークや天気図から雷雨に関してわかることを解説します。
天気のマークから読み取る
雨マークがなくても雨の可能性はある
晴れマークのみ降水確率0%であったらまず心配はありませんが、晴れ時々曇りや晴れ一時曇りなどのマーク、そして小さい雨マークは雷雨の危険性があります。
特にこの晴れと小さな曇りマークは隠れた雨の可能性があります。
もともとゲリラ雷雨というのは雨の降る範囲が狭く場所を絞って予報するのは現在でも難しいです。
そのため雨マークをつけるかつけないかも微妙になるため、雨マークがなくても隠れた雨の可能性があるのです。
もちろん雨が降らない場合や、ただ低気圧が接近してだんだんと曇ってくる場合もあるので、天気予報の解説は良く聞くようにしてください。
天気図から読み取る
ここからはやや高度になりますが、最近は天気図に関心のある方も増えてきているので解説します。
特に山へレジャーに行く方などは知識をつけておくと便利です。
天気図にはテレビでも解説されよく見る「地上天気図」とやや難しい上空の気象状態がわかる「高層天気図」があります。
これらの天気図を見る上で重要なのが「寒冷渦(寒冷低気圧)」や「上空の寒気」などの言葉です。
雷雨が起こりやすい条件で説明しましたが、上空に寒気が流れ込む時は雷雨が起こりやすくなります。その上空の寒気の流れ込みや強い寒気を運んでくる「寒冷渦」は天気図を見ることでわかります。
高層天気図はここでは省略しますが、地上天気図でも寒冷渦はある程度わかります。
上記の天気図のように前線を伴わない低気圧は寒冷渦の可能性があります。特にその低気圧の南東側が雷雨が起こりやすくなるので、そのような天気図を見たときは注意してください。
この日は上空500hPa(5800mくらい)の気温が-9℃、地上は35℃近くまで上昇しているところもあるので、上空との温度差が45℃近くまでありました。
この上空と地上の気温差が40℃を超えると大気の状態が不安定になり雷雨などが発生しやすくなると言われています。
テレビ等の解説で「寒冷渦」や「上空の寒気」という言葉を耳にしたら急な雨の可能性が高いんだと覚えておくだけでも重要です。
天気図が見られるサイト
など
~応用編~SSIなど
雷発生確率などを見る方もいるかもしれませんが、それらはSSIといった数値を元に作成されていることが多いです。
このSSIは雷雨などの現象がどのくらい起こりやすいかを示すもので、数値が小さいほど大気の状態が不安定で、0以下だと雷雨の可能性が高くなってきます。
GPV気象予報などで公開されているので参考にしてください。
※あくまで一つの目安なのでSSIの数値が小さいからといって必ず雷雨が起こる、また大きいからといって雷雨が起こらないというわけではありません。
SSI値が見られるサイトの検索方法
「GPV」「MSM 気象」などと検索すると気象庁の数値予報データから計算されたSSIがマップで見られるサイトがいくつか存在するので参考にしてみてください
雷雨を予測する②当日~直前
天気予報の精度は年々上がっていますが、まだまだ完璧ではありません。当日急に天気予報が変わったり、降水確率0%だったのににわか雨に見舞われることもしばしば・・・
ここでは当日急な雨から逃れるために雷雨を予測する手段を紹介します。
雨雲レーダーを随時確認
最近は雨雲レーダーを見る人が増えてきて嬉しい限りです笑
雨雲レーダーをみればなんとなく強い雨のエコーが近づいてきているといったことがわかりますね。
夏の雷雨に限らなくても日頃から雨雲レーダーを見る癖をつけておくと、急な雨に濡れなくて済むことが多くなるかもしれません。
以下に雨雲レーダーを確認できるサイトを紹介します。
空を見る
最後は人間の五感
以下のようなことが感じられたら雷雨に注意です。
- 空を見てだんだんと雲が近づいてくる
- 急に空気が冷たくなる。風が強くなる
- 雷鳴が聞こえる
- もくもくと空高く雲が発達している。特に早朝から雲が発達していると大気の状態は相当不安定
日頃から空を気にすると天気がある程度予測できるようになると思います!
以上、雷雨の仕組みと天気予報で身を守る方法を紹介しました。
コメント